【専門家監修】SIer経験者は”実は”転職市場価値が高い!?
SIerがなにか分からない方向けにもSIerとはなにか簡単に解説も入れてお伝えします。
SIerとは、システムインテグレーション(SI)をしてくれる会社のことです。システムインテグレーション(SI)とは、ネットワークやハードウェア、ソフトウェアなどを組み合わせて、システムを構築することです。
IT業界で近年、SIerは諸悪の根源のように批判されることが多いように感じます。確かに、SIerは悪と言える点も多々ありますが、ただそれだけではないと感じます。
SIer当事者の方は目次より気になる箇所よりご確認ください!
まず、SIerってなに?
システムインテグレーションとは、ネットワークやハードウェア、ソフトウェアなどを組み合わせて、システムを構築することです。
誤解を恐れずにもっと噛み砕くと、ITを本業としていない会社に対して、外部からIT部門を代行してくれる会社と言ったらわかりやすいかと思います。
このSIerの出自を分類していくと、大きく3つのタイプが存在します。
メーカー系
ITに関連するパソコンやプリンターなどを作って売っていた会社がSIを始めたケースです。SIerの象徴的な存在が、メーカー系といえます。
日立製作所、NEC、富士通、日立ソリューションズ、NECネッツアイなどが代表的な企業です。
ユーザー系
自社やそのグループ会社の情報システム部門が独立し、グループ内のみならず、社外に外販しはじめたケースです。銀行系、通信系、商社系などがあります。
野村総合研究所(NRI)、三菱総合研究所(MRI)、電通国際情報サービス(ISID)伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)などが挙げられます。
独立系
親会社やグループを持たずに、独立してSIを行っている会社です。最初からSIでビジネスをしている会社です。
SRAホールディングス、オービック、ネットワンシステムズ、大塚商会 、BIPROGYなどが挙げられます。
SIerは何をしてくれるの?
ハードウェアの販売、ネットワークの構築(回線を手配など)社内システムの構築(とにかくなんでも作ります)保守(ハードウェアはソフト)データセンターその他諸々とにかくなんでも対応をしています。
メーカー系であっても、自前のパッケージソフト等を持っていない場合は、他社の製品を代理店として販売することもあります。
SIerは、ITに関することならなんでもやる、いわばIT商社といえます。
SIerの闇
商社と表現したのには意味があります。どこかから物を買ってきて、販売する。そして、基本的に他社と競合する。価格競争も発生する。
当然、このビジネスだけでは儲かりません。
もっというと、素敵な自社パッケージがほとんど存在しません。
では何で儲けるのか。
人を動かして儲けます。
エンジニアを稼働させ、そのシステムのカスタマイズや開発を本当に必要か否かは考えず、とにかくエンジニアを稼働させることを重要視します。
そして、そのエンジニアが実際に技術力を持っていて、手を動かしているかというと、そうではありません。
多重下請け構造になっており、実際に手を動かすのは下請けを行っている小さな会社であることが多いです。
SIerが嫌われる理由として、この多重下請け構造があります。
エンジニアの方で、元請けの会社から「安くしろ!早くしろ!」と言われた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最上流だとエンジニアの1時間の単価は2〜3万円で受注し、お客様からお金をもらっていますが、最終的には2〜3千円でどこかの開発会社が動いていたりするのです。
そのため、SIerが嫌われるのは、SIer自体よりも、大手SIerが行うSES(エンジニアの委託契約)による、多重下請け構造による、中間搾取といえます。
SIerのエンジニア(SE)の仕事内容
SIerのSEの多くが広く浅く仕事を行います。
・営業に同行し、一緒に提案をする
・受注後のプロジェクトのPM
・外注先のマネジメント
・お客様からの問い合わせサポート
一人でやることが多く、自分が稼働しないと赤字になり、とにかくなにかお金になる仕事を取らないといけないため、激務になりやすいといえます。
外資系だと必ず営業とタッグを組んで受注まで実行するプリセールスエンジニアがいますが、SIerにはほとんど存在しません。
受注後はプロジェクトマネジメントを専門で行うPS(プロフェッショナルサービス)の部隊がありますが、SIerは基本的に提案時に同行していたSEが実施します。
コードが書けない場合はIT関連の営業職への転職が一般的です。
SIerで働くことの将来性について
価格競争になり独自性を持った企業が残る
当たり前のことですが、クライアント先からのシステム発注に対して、迅速、且つ安価で開発できるSIerの需要は高い一方で、今後はSIerの多くが価格競争となり、ディスカウント、且つ開発期間の勝負になっていきます。
残業時間は今後も変わらない
価格競争以外にも、短期間でのシステム開発が求めらる傾向があります。本来6ヶ月で開発するところ、4ヶ月くらいで開発することを求められるかもしれません。
その結果、SEの労働時間も長くなる可能性があります。大手SIerであれば、残業代をフルで支給してくれるかもしれませんが、中堅SIerなどであれば、残業代を払ってくれないところもあります。
残業時間が増えただけで、給与が変わらず時間給が減ったなんて話も珍しいことではありません。ITの発展により、今後もシステム開発の需要は高まりますが、価格競争と開発期間のシワ寄せが、SIerの方にくることでしょう。
一次請けSIerのみが高収入を得られる
プライム案件に携われる一次請けSIer(大手SIer)のみが今後も高収入を得られることになるでしょう。海外では下流工程の仕事に携わる方に、高い給与を支払う傾向にあるようですが、日本が上流工程の仕事に携わる方を高く評価するのは、今後も変わりません。
その背景には、圧倒的に上流工程に携われる人材が日本に不足していることがあります。
さらに、FinTech(金融×IT)やHR Tech(人材×IT)、AutoTech(車×IT)などと、今後のSIerには、様々なクラウドサービスを組み合わせることが求められてきます。クライアントのビジネスを成功に導くコンサルティングの要素がより一層強まります。
こういったコンサルタントとしてのスキルが身に付くのも、一次請けSIerに限った話になり、業界での市場価値が高くなります。
転職市場におけるSIer出身者の今後の需要について
事業会社・コンサルティングファームでのIT人材不足はさらに加速していくことでしょう。
クライアント先の人事担当者や現場責任者、役員レベルの方などと話をしていると、SIer出身者の需要はこれから先も高くなっていくと聞きます。ただし、SIer出身者だからといって、転職市場での需要が必ずしも高いとも言えません。
上流工程・PM経験者の需要は常に高い
AIの発展により、今後、簡単なプログラミング業務が自動化される可能性は高いです。
そのため下流工程の仕事は、どんどん自動化が進み、人材としての需要が低くなっていきます。どの業界でも言われていることですが、人材不足を解消するために、AIにより自動化する仕事は今後、さらに増えていきます。
ただし、感性を必要とする上流工程の仕事は人間にしかできない高度な業務です。ITの発展により、上流工程、さらにPM経験のある方の採用は、今後も活発になっていくことでしょう。
最近では、AIエンジニア・機械学習エンジニアといった職種に注目が集まり、高い年収を得ている方もいます。現実的には、上流工程・PM経験者が転職先としての選択肢(求人案件数)のほうが、圧倒的に多いです。
開発経験がなくとも市場価値は高いですよ
二次請け・三次請けに長年いても限界がある
二次請け・三次請けで働くシステムエンジニアの方を悪くいうつもりはありませんが、転職市場において、一次請け出身者との市場価値の差は大きい特徴があります。
転職先で提示される年収だけではなく、転職先としての選択肢も限られます。
今後、キャリアアップを考えているのであれば、二次請け・三次請けSIerで長く働くことはオススメできないかもしれません。
特に、下流工程にしか携われないSIerで働いていても、将来的に給与も上がらず、残業時間が増えていくだけです。
今後の転職市場で、需要が高くなるのは一次請けSIerのみとなってくるでしょう。
ただ、未経験の場合は選択肢がそもそも少ないため、経験を高める意味で二次請け・三次請けSIerの受け皿はニーズがあります。少しずつポジションを変えていくことをおすすめします。
大手SIerで働いていることに満足してはいけない
NRIやNTTデータ、富士通などの大手SIerで働いている方でも、現状に満足できず転職を考えている方が多いです。
「贅沢な転職理由があるんだろうなあ。。。」と考えてしまうかもしれませんが、「ビジネス検討フェーズに携わりたい」、「年収をアップさせたい」や「ボトムアップの会社で働きたい」などのシンプルな理由で転職を検討している方が多いです。
最近の傾向では、SIerやコンサルティングファームから事業会社に転職する方が増えてきました。なかには、年収を100万円くらい下げてまで事業会社に行きたいという方もいます。
SIerからの転職・独立を含むキャリアパス
今よりも待遇が良いSlerへの転職
自身が理想とする業務内容や年収、待遇といった雇用条件がより良い他会社へ転職するケースです。PMスキルや企画力など付加価値的なスキルを身に着けることで、好条件の企業への転職成功率が高まります。
他業種と同じく年齢が若いほどポテンシャル採用してもらえる確率が上がるので、転職を考えているのであればできるだけ早く動くようにしましょう。
このキャリアパスを選ぶメリットは、理想的な仕事環境を得られる可能性があることや、収入アップ、待遇の改善が狙えるということにあります。
年齢が上がると技術力以外にもどんなスキルを身につけられているのかが厳しく見られる傾向にあります。より待遇の良いSIerへの転職を目指す場合には、若いうちに今後のキャリアを見定めて行動を起こすか、市場価値の高いスキルを身につけることが大切でしょう。
コンサルティングファームへの転職
SIerで培った技術を使って、お客様の経営課題にITの側面から改善策を提供します。お客様の経営課題をみつけるコミニュケーション能力や関連部門との折衝能力などが要求されます。
SIerrで上流工程を経験していれば、これらの能力が醸成され、SIerで全行程を経験していれば、その経験が生かせる職種です。このキャリアパスは、収入アップ、待遇の改善が期待できます。
コンサルティングファームへの転職はケース面接などがあります。学歴や未経験からの挑戦ができる企業は少ないため、BIG4を含むファームに強みがありコンサルティングファームに特化した転職サービスである「アクシスコンサルティング」の利用も検討してください。
自社サービスを展開する企業への転職
受託開発を行うSIerから、自社サービスを持っている企業、いわゆる事業会社へ転職するケースです。
顧客の要望通りにプログラムを組んで納品するまでがゴールのSlerとは違い、PDCAを回してサービスがより良くなるよう試行錯誤できる点に魅力を感じる方も多いようです。
転職に向けては、日ごろから市場の動向をキャッチアップし、より良いサービスにするためにはどうすればいいかを考え、サービス志向性を身につけておくと良いでしょう。また、組織の規模によってはフロントエンドからバックエンドまで幅広い業務に携わることになるため、希望する企業の業務内容をリサーチし、必要な知識は積極的に吸収するようにしましょう。
しかし、結果至上主義になりやすい部分があるので、新しい技術やトレンドを追いかけたい技術志向性の高い人にとっては、ストレスを感じることもあるようです。事業会社への転職は、技術を目的ではなく手段と捉え、ユーザーによりよいサービスを提供していきたいと考える人に向いている選択であるといえます。
社内SEへの転職
SIerで培ってきたスキルを活かして、事業会社の社内SEに転職するケースです。ユーザーとの距離が近く、社内のシステムを最適なものにするために試行錯誤できる点に多くの人が魅力を感じるようです。
近年は、社内SEにも売上UPへの積極的な貢献が期待されるようになりつつあり、従来の情報システム部門としての役割をこなすだけではなく、プラスアルファでスキルを身につける必要があります。
SIerからの転職はエージェントサービスをフル活用する
転職エージェントは、個々のスキルや経験に合った求人情報を提供し、求職者と企業とのマッチングを支援します。これにより、自身のキャリアゴールや志向に合ったポジションを見つけやすくなります。
エージェントは転職の専門家であり、キャリアに関するアドバイスや戦略的な指導を提供してくれます。自身のキャリアゴールやスキルセットに合わせて、最適な転職戦略を立てるのに役立ちます。また、エージェントは面接対策や履歴書の作成に関する助言を提供し、転職プロセスでの成功を支援します。自身の強みを最大限に引き出し、自信を持って面接に臨むことができます。
非公開求人や企業から直接得た情報もあるため、貴重な求人情報を得ることができますよ。また年収アップや面接対策にも力を入れているため活用して損はないはずです。