【個人事業主から法人化するメリットとは⁉︎】法人化するタイミングは所得800万円以上
個人事業主が法人化するタイミングは…
一般的に個人事業主が法人化するタイミングは、所得が800万円~900万円になったときが良いといわれています。
個人事業主の所得税率は、所得が増えるほど税率があがる仕組みです。
例えば、所得が695万円~900万円未満の場合、税率は23%となりますが、所得が900万円を超えると税率は33%に上がります。
一方で、普通法人の法人税率は、利益が800万円以下の場合は15%、800万円を超える部分は23.20%に設定されています。
売上・利益から考えるのであれば、所得が800万円~900万円になったときであれば、損益分岐点に近いタイミングで、法人化がしやすいです。
ただし、法人化の判断をする場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
個人事業主と法人の違い
個人事業主と法人の違いは課される税負担の種類が違う部分です。個人事業主には「所得税」がかけられて、法人には「法人税」がかけられることになります。
また、手続きの手間も異なります。個人事業主は法人と異なり、会社の登記をする必要がありません。また、登記をする必要もないので、手続きのためのお金も支払う必要もありません。
しかし、法人の場合は会社の設立登記をしなければいけません。法人には株式会社か合同会社かどちらかを選択することになります。
設立時の費用は合同会社が低く信用力は株式会社が高い、などそれぞれの特長があります。将来の事業計画を踏まえて選択しましょう。
インボイス制度を機に法人化する?
インボイス制度の開始に伴って、売上や利益とは関係はなく、法人化を考える個人事業主が増加しています。
インボイス制度の開始に際して、法人化するメリットにはどのようなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。
節税対策ができる
個人事業で赤字が出た場合、翌年以降3年間、繰越しすることができますが、法人化した場合の繰越し期間は10年間になります。
なお、2018年3月31日以前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年です。大幅な赤字が出てしまった場合など、長期間でリカバリーする方が負担は少なく、節税効果も高くなります。
また、役員である自分などに適正な役員報酬を支払った場合、役員報酬として経費計上できるため、法人としての課税所得を減らすことができます。自分が受け取った役員報酬(給与所得)には「給与所得控除」が適用され、55万~195万円の控除が受けられます。
取引先や金融機関からの信用が高くなる
よく言われるのが、法人であれば、取引先や金融機関からの信用が高くなるメリットがあります。信用度が高ければ、事業用の交渉が事業者に有利になり、売り上げ増に寄与することになります。
一般的に、フリーランスや個人事業主は増加傾向にありますが、取引先を法人のみに限定している企業もまだまだ多く、法人化することで取引先の幅が広がる可能性もあります。また、事業を拡大したいときなどに、金融機関からの融資も受けやすくなるでしょう。
個人事業主が法人化するデメリット
メリットも多い個人事業主の法人化ですが、デメリットもあります。具体的にどのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
事務手続きが増える
法人になると、日々の経理処理や決算手続きが個人事業主のときよりも複雑になり、税務署などへの提出書類も増えます。そのため、税理士に依頼したり、事務スタッフを雇う必要が生じたりするなど、経費がかさむ可能性もあります。
また、個人事業主の場合、事業に関わる交際費はすべて経費として計上可能です。
しかし、法人の場合は飲食費に限ってのみ50%を経費として認められ、年間800万円までが上限となります(資本金1億円以下の企業の場合)。
したがって、多額の交際費を使っている個人事業主が法人化する際や、資本金が1億円を超える場合の法人化は、経費として計上できる交際費が減ることへの注意が必要です。
赤字決算でも免税にならない
個人事業主の場合、赤字になれば所得税・住民税ともに免税されますが、法人の場合は全てが免税とはなりません。
法人が赤字決算になった場合、法人税や法人住民税の法人税割、法人事業税は免税となります。しかし、法人住民税の均等割は納税しなくてはなりません。
これは、利益をもとに算出される税金ではなく、法人の規模や事業所等の有無に応じて算出される税金だからです。また、課税事業者の場合は、消費税も納税しなくてはなりません。
社会保険に加入する義務がある
個人事業主の場合、一定規模以下であれば社会保険への加入は必須ではありません。しかし、法人の場合は役員1名であっても、原則として健康保険と厚生年金への加入義務があります。役員報酬の額にもよりますが、個人事業主のときの国民健康保険と国民年金よりも割高になるケースが多くなります。
法人成りを見送ったほうがいいケース
前章までで法人成りのメリットを紹介しました。メリットは多いですが、逆に言えば法人成りを見送ったほうがいいケースもあります。
そもそも個人事業主で仕事をしている人は、時間に自由が効くことや自分で何でも判断できるといった要因が大きいでしょう。法人化することで少なからず維持や管理コスト、業務は増えますので人によっては忙しくなってしまっただけ、という場合もありえます。
法人化をした方が良い場合
先述したケース以外に、優秀な人材の採用をしたい場合は、「法人化」しましょう・
人材を集めたい場合は法人の方が有利です。
個人事業主の場合、信用力が弱いことから成長力のある安定した職場とは思われにくく、人材を募集したいときに優秀な人材を集めることが困難です。
一方で法人を設立した場合、個人事業主よりも信用力が高い判断されるので優秀な人材を募集しやすくなります。また人材採用をする場合に国の制度もあります。転職サービスを利用する場合も「法人化」した方が良い場合もありますので、事業の拡大を見据える場合は、法人化することをおすすめします。
資金調達を見据える場合
経営には「人」「モノ」「金」の経営資源が必要です。そのなかでも最も重要な「資金」は、その調達ができなければ副業を開始できません。
副業の開始に一定の軍資金が必要で、その資金を個人で調達できなければ出資者を募ったり、金融機関などから借入をしたりする必要があります。
この場合は、個人事業主よりも法人を設立したほうが資金調達は容易です。また、ベンチャーキャピタルなどから資金調達をしたいときは最初から法人であることが必要です。
マイクロ法人とは⁉︎
マイクロ法人とは、会社法に定められた会社の形態ではなく、一般的に経営者1人だけで経営している会社の呼び方の1つです。経営者の家族を含む場合もあるため、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。
マイクロ法人は、現在設立できる会社形態のうち、株式会社や合同会社、合名会社で設立することができます。合資会社は、有限責任者と無限責任者がそれぞれ1人以上必要ですので、1人の場合は設立できません。
一般的な法人との違い
マイクロ法人と一般的な法人の違いは、自分以外の株主や役員、従業員がいないことの他、事業拡大を目指すかどうかという点です。例えば、株式会社の場合、一般的な法人は、利益の維持や向上のために事業拡大を目指し、得た利益を株主などに配分します。
マイクロ法人は、出資者である株主と経営者の役割を経営者が両方兼ね、1人でできる範囲で事業を行います。
1人でできて、かつ設備費や仕入れ費用が抑えられるような業種として、コンサルタントやライター、デザイナー、ブロガー、アフィリエイターなどが挙げられるでしょう。
個人事業主との違い
マイクロ法人と個人事業主の違いは、起業の手続きや税金の仕組み、経費の範囲などです。例えば、個人事業主として開業するなら税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出するだけですが、法人を設立する場合は、定款の作成や法務局での法人登記などが必要です。
法人の設立は手間や費用はかかりますが、場合によっては個人事業主よりも節税効果が高くなるといったメリットがあります。そのため、1人で事業を行うにしても、個人事業主ではなく、マイクロ法人を選ぶ方もいます。
法人化の手順と必要な手続き
法人化が起業による法人設立と違う点は、個人事業主として行っていた事業を引き継ぐということです。ここからは、法人化するための手順を見ていきましょう。
STEP1. 法人の設立
法人化する際にはまず、法人設立に関する手続きが必要です。
具体的には、定款の作成と認証、資本金の払い込み、設立登記申請といった手続きを行います。株式会社や合同会社など会社の種類によって手続きは多少異なるため、設立する法人の手続き内容を確認しておきましょう。
STEP2. 個人事業の廃業手続き
法人を設立したら、個人事業の「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を管轄の税務署に提出し、廃業手続きを行います。
青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、従業員を雇っていた場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」も提出します。
個人事業を廃業しても、最後の年の確定申告は必要です。
廃業した翌年に確定申告を行うのを忘れないようにしましょう。また、法人化1年目は、前述の個人事業主の事業所得に加え、法人化後の役員報酬をもとにした給与所得の2種類の申告が必要です。
STEP3. 資産や負債の引き継ぎ
設立した法人に、事業に関わる資産や負債を引き継ぎます。資産の移行には、「売買契約」「現物出資」「賃貸契約」の3つの方法があり、それぞれ手続きや税法上の取り扱いなどが異なります。
また、法人に債務を移行する方法には、設立した法人が個人事業主と共に債務引受する「重畳的債務引受」と、法人単独で債務を引受する「免責的債務引受」があります。
STEP4. 許認可手続きや各種契約物の名義変更
許認可が必要な事業を営んでいる場合や、オフィスや店舗の賃貸契約を結んでいる場合などは、個人から法人への名義変更を行います。取引に使用する銀行口座も、個人名義のものとは別に法人名義の口座を開設しましょう。
余談:サラリーマンをしながら会社を設立することは可能?
サラリーマン(会社員)として働いている場合でも、会社設立は可能です。
会社の設立や手続きを定めた法律である「会社法」でも、会社と雇用契約を締結している状態での会社設立を禁止していません。実際に、会社員として働きながら会社を設立した人や、会社の代表を務めたまま別の会社で社員として働いている人もいます。
ただし、勤務先が就業規則の中で副業や兼業を禁止している場合は、会社を設立すると懲戒処分されてしまう恐れがあるので注意が必要です。
サラリーマンが法人設立した場合、雇用保険はどうなる?
雇用保険は複数の会社で加入することはできないので、原則として、『生計を維持するのに必要な賃金をもらっている会社』で雇用保険へ加入することになります。
つまり、本業の会社で雇用保険に加入していれば、“副業”として働く会社では加入する必要がないという事です。
※本業退職時の有給休暇消化期間中は、副業先で雇用保険の資格取得手続きができないこともあるため、注意が必要です。
また、労災保険(通勤中や業務中に負傷したときに支給される保険)は就業先の会社でそれぞれ加入することになりますが、保険料は雇用主の全額負担となります。
会社設立時は一人社長・マイクロ法人でも社会保険加入が必須!
起業したばかりの会社の事業主の方の中には、自分のビジネスのことで頭がいっぱいになり、なかなか社会保険までは気が回らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、会社を起業したばかりで従業員を雇っていない場合、「社会保険の加入義務はない」と勘違いされている方もいるかもしれません。
健康保険法第3条と厚生年金保険法第9条において、「適用事業所に使用される者」は「被保険者」であるとされており、この「使用される者」には法人の代表者も含まれると解釈されています。
つまり、社長ひとりだけの会社であっても社会保険に加入する義務があります。
社長を従業員として雇用した場合・複数の会社経営をされている場合でも「社会保険の加入義務」が発生し、『生計を維持するのに必要な賃金をもらっている会社』で雇用保険へ加入することになりますので、注意が必要です。
雇用保険が未加入だった場合は、公的機関であるハローワークに身分証などの必要書類を持参し、管轄のハローワークにすぐにいきましょう。雇用保険に加入できる期間は、さかのぼって雇用保険に加入する届け出をした日から2年以内となりますが、加入すれば問題はありません。
雇用保険未加入の場合は、義務違反となり、適用要件を満たしているにも関わらず加入させなかった場合は、雇用保険法に基づく罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるほか、雇用保険料の追徴金、延滞金の納付が求められることもあります。
雇用保険について不安のあるとき、まずは弁護士の無料相談が有益です。