【転職後の住民税はどうなる⁉︎】退職時期で異なる手続きや納付方法を解説【社労士監修】
会社員の住民税は、基本的に給与から天引きで支払われています。
ただし転職する場合、退職月によっては自ら手続きを行い、納付書を用いて自身で納税する必要があります。
退職時・転職時に押さえておきたい住民税の手続きや納付方法、住民税について、詳しく解説していきます。
住民税とは?
住民税とは、日本において、市区町村が課税する地方税の一つで、住民の所得に応じて課税される税金です。
基本的に会社員は、給与から天引きされています。
住民税は、国民全員が支払う国税と異なり、住んでいる地域の市区町村に対して納付する税金です。
住民税の納付期間は、毎年6月から7月にかけて行われます。
納税額は、前年度の所得額に応じて算出され、個人事業主や自営業者の場合は、事業所得に応じた額が課税されます。
また、住民税の納付額は、住んでいる市区町村によって異なります。
住民税は、地方自治体の財源として、市区町村の公共事業や福祉施設などの財政運営に利用されます。
また、住民税は、国民健康保険や介護保険の保険料の算出にも利用されます。
なお、住民税には、特例措置として、住民税非課税世帯、住民税軽減世帯、高齢者特別税額控除などの制度があります。
住民税の算出方法
住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税される「所得割額」と、所得に関係なく均等に課税される「均等割額」を合計して算出されます。
会社員の場合、納税を行う年の1月1日時点で住所を有する市区町村に対し、会社側から「給与支払報告書」が送付されます。
これに基づいて住民税が算出され、5月までに会社経由で住民税額の通知がなされます。
こうして決定された1年間の住民税は12等分され、翌6月の給与から1年間かけて給与天引きされることになります。
住民税の納税方法
住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2つがあります。それぞれの違いについて解説します。
特別徴収
特別徴収とは、会社員の住民税分を給与から天引きし、会社側がまとめて納税する方法です。
前述のように、1年間の納税額を12等分し、翌6月の給与から天引きされます。納付書で自ら支払いをするといった手間がかからず、自動的に納税が完了します。
普通徴収
普通徴収とは、個人事業主や退職者などが確定申告を行ったうえで自ら納税する方法です。
特別徴収のように12等分されるのではなく、一括もしくは2~4等分され、個人で納付する点に違いがあります。
普通徴収の場合、市区町村から住民税の納付書が送付されてきますので、金融機関やコンビニなどで支払います。
転職先が決まっている場合の手続きと納付方法
転職先が決まっている場合は、転職先でも継続して特別徴収で納付することが可能です。
市区町村に対して転職先の会社から「給与所得者異動届出書」を提出すれば、特別徴収が継続され、これまで通り給与から天引きされる形で住民税の納付が完了します。
退職する会社に継続したい旨を伝えれば、「給与所得者異動届出書」を作成してもらえますので、それを受け取ったら転職先に提出してください。
注意が必要なのは、転職先への切り替えに時間がかかることです。
2カ月ほど期間を要することもあるため、場合によっては手続きが納付の期限に間に合わないことも考えられます。
こうしたケースでは、退職する会社に依頼し、数カ月分の住民税を給与からまとめて天引きしてもらうか、もしくは普通徴収に一旦切り替えて自身で納付することになります。
退職する会社に手続きを依頼するのが難しいケースも考えられますが、依頼をしなかったとしても自動的に普通徴収への切り替え手続きが進められるため、市区町村から送られてきた納付書で支払いを済ませれば問題ありません。
納付書で住民税を納付した後、改めて転職先の会社で特別徴収への切り替えを依頼しましょう。
転職先が決まっていない場合の手続きと納付方法
転職先が決まっていない状態で退職する場合は、自身で納付する普通徴収に切り替わります。
何も依頼しなければ自動的に普通徴収の手続きが進められますが、退職する会社にきちんと手続きを依頼するのがよいでしょう。
なお、退職した時期によって普通徴収の納付方法が異なりますので、以下の点をあらかじめ確認しておきましょう。
1月1日~5月31日に退職した場合
その年度分の残りの住民税は、基本的に最後に支払われる給与から一括で徴収されます。
ただし、場合によってはかなりの高額になるため、退職月の給与額より徴収される住民税の方が多いケースも考えられます。こうした時には普通徴収に切り替えられ、自身で市区町村に納付することになります。
6月1日~12月31日に退職した場合
退職月に支払う分の住民税は給与から天引きされますが、退職する月以降に支払うはずだった残りの住民税は、普通徴収に切り替わります。
市区町村から送付されてきた納付書を用いて期日までに自身で納付するようにしましょう。
なお、翌年5月まで毎月天引きされるはずだった住民税分を、退職月の給与や退職金から一括して納付することも可能です。
もし希望する場合には、退職する会社にあらかじめ相談しておきましょう。
転職と同時に引っ越しをした場合はどのような手続きが必要か
住民税は、その年の1月1日時点で住民票がある市区町村に納付します。
従って、1月2日以降に引っ越しした場合は、引っ越しする前の市区町村に住民税を納付します。住民票を移動していないケースも同様となります。
市区町村に転出届・転入届などの住所異動の手続きをすることで、住民税の納付先が切り替わるため、二重払いになることはありません。
引っ越し先の市区町村で住民税を納付するのは、住所異動の手続きをした翌年の6月からです。
転職後、住民税が天引きされていない場合はどのような手続きが必要か
1月から5月までに退職した場合は、5月分までが退職月に一括で徴収されます。そのため、6月の給与までは住民税が天引きされません。
転職先の会社で天引きしてもらいたい場合は、まず転職先の人事担当者に相談しましょう。市区町村から送られる納税通知書および納付書を渡し、転職先の会社経由で市区町村へ提出することで、特別徴収に切り替える手続きを行ってもらいます。
すでに納付済みの分がある場合は、その領収書も提出することで、住民税の重複納付を防ぐことができます。
転職後も特別徴収を継続したい場合はどのような手続きが必要か
転職後も特別徴収を継続するには、退職する会社に「給与所得者異動届出書」の作成を依頼し、転職先の会社から市区町村に提出してもらいます。
給与所得者異動届出書は、退職月の翌月10日までに、従業員が居住する市区町村宛に提出する必要があります。退職する会社には事前に依頼しておきましょう。
次の転職先が決まっていない場合は、普通徴収の納税通知書や納付書が届いてから、転職先の会社に申し出て特別徴収への切替申請書を提出してもらえば、特別徴収に切り替えることができます。
転職後の給料が下がったのに、引かれる住民税が高いままなのはなぜか
住民税の金額は、前年の所得金額に対して算出されます。
前年の収入金額が高ければ、転職して収入が下がった場合でも、住民税は高くなります。
年収が大幅にダウンする場合は、貯金などしておきましょう。
転職先の会社から住民税異動届の提出を求められたらどうすればいいか
住民税異動届は、転職前の会社に依頼して「給与所得者異動届出書」を発行してもらいましょう。
退職時に転職先の会社が決まっていなかった場合は、前職の会社から市区町村に提出していることもあります。その場合は、市区町村からの通知を持って、転職先の会社と相談しましょう。
年収500万円(手取り)ですと約24万円、年収600万円(手取り)ですと約30万円の住民税がかかります。
転職後に収入が大幅に下がってしまった場合、住民税にどう影響するのか
転職や退職で収入が大幅に下がってしまったとしても、住民税は前年の所得に対して算出された納税額を支払わなくてはいけません。
住民税には、条例で定める天災等特別な事情があるとき以外は、減免措置がありません。
転職によって収入が大幅に下がる場合や、次の会社に入社するまで期間が空く場合などは、あらかじめ住民税の支払いが発生することも念頭に置いておくようにしましょう。
住民税の支払いが遅れてしまったらどうなるか
住民税の滞納には、「延滞税」が課せられます。
納期期限後は督促状が発行され、滞納期間が延びれば伸びるほど、その金額が大きくなっていきます。
場合によっては、銀行口座の差し押さえなどの処置が行われる場合もあります。納付期限までに納めるようにしましょう。
育休・産休中の場合、住民税は発生するか
住民税は前年の所得から算出されるため、前年に所得があれば産休・育休中であっても住民税は発生します。
また、産休・育休中は給与が支払われないため、6月を起点に産休に入る時期によっては、特別徴収から普通徴収に切り替え、自分で納めなければなりません。
例えば産休に入る期間が1~5月であれば、その間の住民税は「特別徴収」となり、5月までの住民税は一括徴収となります。6~12月に産休に入る場合は、普通徴収に切り替わります。
また、健康保険の被保険者およびその被扶養者が受け取れる「出産育児一時金」や「出産手当金」、「育児休業給付金」は非課税の収入となるため、住民税はかかりません。
普通徴収とは、個人事業主や退職者などが確定申告を行ったうえで自ら納税する方法です。