■コラム

【専門業務型裁量労働制とは⁉︎】制度を導入する上での経営者のメリット・転職者/社員のメリット・デメリットを転職支援のプロが解説!!

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「専門業務型裁量労働制」はどのような制度?

労働者に、大幅に業務遂行の手段や方法・時間配分などの裁量にゆだねる必要がある業務で、実際にその業務に就いた場合、労使で定めた時間分働いたとみなす制度のことです。

「専門業務型裁量労働制」は、従業員の労働時間を管理するための特殊な労働制度の一つで、日本において使用されています。

この制度は、労働者の働く時間ではなく、その成果や労働の質に焦点を当てています。

専門業務型裁量労働制の下では、労働者は彼らの仕事を完了するために必要な時間を自由に決定することができます。

つまり、一定の時間枠内で働くのではなく、自分の裁量で作業スケジュールを設定し、タスクを完了することが求められます。

しかし、この制度は、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事する労働者に限定されています。

例えば、会社と社員間で取り決めた労働時間が1日8時間とした場合、実際の労働時間が9時間でも7時間でも「8時間」とできます。

これを「みなす」としています。

「対象業務」

下記19業務に限り、「労使協定を締結」することによって導入できるとしています。

19業務のうち、クリエイティブ的な業務は比較的多めであることがわかるかと思います。

1.新商品もしくは新技術の研究開発、または人文科学、自然科学に関する研究業務

2.情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として、複数要素が組み合わされた体系でプログラムの設計基本となるもの)の分析、または設計の業務

3.新聞や出版事業における記事の取材・編集業務、または放送番組制作のための取材、もしくは編集業務(放送法に規定する放送番組、有線ラジオ放送業務に規定する有線ラジオ放送、有線テレビジョンの放送番組の制作のための取材、もしくは編集の業務)

4.衣服・室内装飾・工業製品・広告などの新たなデザイン考案業務

5.放送番組や映画などの制作事業におけるプロデューサー、またはディレクター業務

6.広告・宣伝などにおける商品などの内容、特長などに係る文章案の考案業務
(=いわゆるコピーライター業務)

7.事業運営において情報処理システム(2と同じ)を活用するための問題点の把握、またはそれを活用するための方法に関する考案、もしくは助言業務(=いわゆるシステムコンサルタント業務)

8.建築物内における照明器具や家具などの配置に関する考案・表現、または助言業務
(=いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

9.ゲーム用ソフトウェアの創作業務

10.有価証券市場における相場などの動向、または有価証券の価値などの分析・評価、またはこれに基づく投資に関する助言業務(=いわゆる証券アナリスト業務)

11.金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発業務

12.学校教育法(昭和22年法律 第26号)に規定する大学の教授研究業務(主として研究に従事するものに限る)

13.公認会計士の業務

14.弁護士の業務

15.建築士(一級・二級建築士および木造建築士)の業務

16.不動産鑑定士の業務

17.弁理士の業務

18.税理士の業務

19.中小企業診断士の業務

「裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」の違いは?

「裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」は、適用対象とその詳細な運用には違いがあります。

裁量労働制

裁量労働制は、従業員に一定の自己裁量を許容して業務の遂行や労働時間の調整を行う労働制度です。

従業員が自身の業務スケジュールや労働時間を柔軟に調整できる一方で、一定の業務目標や成果達成が求められます。

この制度は、業務遂行に対する自己責任と適切な成果を重視するものであり、生産性向上を目指す際の一つの手段とされています。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、裁量労働制の一種であり、専門的な知識やスキルを持つ従業員が自己裁量を活かして業務を遂行する制度です。従業員が専門性を活かして業務を進め、成果を上げることが重要です。

この制度では、成果を基にした評価や報酬が行われることが多く、高度なスキルを持つ人材の能力を最大限に発揮させることを目指します。

要約すると、裁量労働制は労働時間と業務の自己裁量を許容する一般的な制度であり、専門業務型裁量労働制は、その中でも特に専門的なスキルを持つ従業員が自己裁量を活かして業務を遂行し、成果を重視する制度です。

「裁量労働制」と「フレックスタイム」の違い

裁量労働制: 裁量労働制は、従業員に一定の自己裁量を与えて業務の遂行や労働時間の調整を行う労働制度です。従業員は、自身の業務の進捗や優先順位を考慮して、労働時間の開始や終了、休憩のタイミングを自由に調整できます。成果や達成度を重視することが多く、効率的な業務遂行を目指す制度です。

フレックスタイム: フレックスタイムは、従業員が一定のコアタイムを守りつつ、その他の労働時間を柔軟に調整できる制度です。コアタイム内での出勤や業務が必要であり、その他の時間帯を自己調整することができます。従業員のライフスタイルや家庭の事情に合わせた働き方が可能であり、ワークライフバランスの向上を図ることが目的です。

要約すると、裁量労働制は労働時間と業務の自己裁量を許容する制度であり、フレックスタイムは一定のコアタイムを守りつつ労働時間を柔軟に調整する制度です。

両制度とも従業員の柔軟性を重視していますが、裁量労働制は業務の自己裁量が中心であり、フレックスタイムは労働時間の調整が中心となっています。

みなし残業制度との違い

みなし残業制度とは、実際の残業時間にかかわらず、雇用契約に基づいた一定の残業時間を働いたとみなす制度です。

あらかじめ一定の残業代を含めた賃金契約を結ぶため、実際の残業時間が少なかったとしても「みなし残業時間」分は給与として支払います。

みなし残業制度と裁量労働制では、「労働したとみなす時間」の対象が異なります。みなし残業制度における対象は「所定労働時間を超えた残業時間」であるのに対し、裁量労働制における対象は「所定労働時間」と考えるとよいでしょう。

専門業務型裁量労働制の「メリット&デメリット」

この制度の「メリット」は、社員には労働時間の縛りがなく融通も利くので、柔軟な働き方が実現できること、そして企業にとっては一定の人件費に抑え、成果も重視できることが上げられます。

例えば、通常の雇用制度なら時間内に出勤しなければ遅刻扱いとなり、給与に影響を及ぼすこともあります。

しかし、この制度では出社も退社時間も一般的には決められておらず、求められた成果を出せば、お昼に出勤しようと午前中で退社しようと問題にはなりません。

つまり、1日を労働者が自由に設定できるので、ライフスタイルに合わせた時間の使い方や仕事が可能です。

このような働き方は、クリエイティブ系にも最適な雇用制度と言え、時間で縛ると仕事効率が悪くなる業種にも適しています。

一方で、この制度にも当然「デメリット」はあります。

基本的に「みなし労働」扱いなので、朝から夜中まで働いても残業手当は一切支払われない問題があります。

深夜10時以降から翌朝5時までや法定休日の場合は、残業手当や休日出勤の割増賃金が適用されます。

ただし、この制度を導入する企業の多くは「夜中や早朝勤務を禁止するケース」も多数あり、結果として「残業代がカットされただけ」となり得ます。

適用次第によっては「専門業務型裁量労働制」が残業代をカットできる雇用制度となり、時間を自由に使えるメリットが、逆にいくら働いても給与総額が変わらないデメリットになる表裏一体の危険性をはらんでいます。

当然、能力があり成果を短時間で出せる人ならデメリットの可能性も低くなります。

ただ、クリティティブ系でもよくあるように、締め切り前など仕事が立て込む場合、労働時間が無制限に延長されることも起きやすく、雇用制度への社員の理解がなければ導入が難しい制度でもあります。

そのため、導入時は「メリットとデメリット」をしっかりと理解した上、会社と社員の働きやすさのバランス管理が重要です。

「専門業務型裁量労働制」導入にあたってのルールと注意点

制度導入にあたり、次のルールと注意点を把握して正しく進めることが必要です。

1.労使協定の締結

当該事業所で、労働者の過半数が加入する労働組合か、組合がない場合は労働者の過半数を代表する者が、書面による協定で締結します。通常はほとんどが組合がないので、後者が多いでしょう。

注意点として、代表者を選ぶ際、会社に都合のいい社員を選び協定に捺印させるなど、不適切なケースも多々あります。後から選出が不適切だと言われないようきちんと選ぶ必要があります。

2.労使協定で定めること

制度導入には「労使協定」が必要です。

労使協定で定めることは厳格であり、社員にきちんと説明できるよう一つひとつ定めます。

特に「みなし労働」は割増賃金支払いの関係上、長時間労働気味の業務なら、まずは労働時間削減を検討し、その上で「みなし労働時間」を代表と決めることをオススメします。

会社が一方的に決定すると、残業代抑制のために制度を導入したと勘違いされる場合もあり、十分な話し合いを経て決めることが最も肝心です。

3.健康・福祉確保措置、および苦情処理措置を講じること

対象労働者の勤務状況の把握が必要です。使用者が状況を把握する方法としては、対象労働者がどの時間帯にどの程度在社し、労務を提供し得る状態にあったかなど、入退出時刻の記録が必要です。

4.苦情処理措置

苦情の申し出窓口、および担当者や取り扱う苦情範囲、処理手順などの方法を明らかにすることが必要です。

やはり長時間労働に陥りやすく、現状の不満や問題点をきちんと言える窓口を社内に設け、適切に運営することが求められます。

まとめ

専門業務型裁量労働制について、対象業務やメリット&デメリット、ルールなどをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

多様な働き方が広がる中、特にクリエイティブ業界はこの制度を採用している企業も多いと思います。

大切なのは、企業も労働者も制度についてまず「よく理解すること」。

使い方次第では能力を最大限に活かせる働き方の実現と、会社発展に寄与する制度であるので、会社のみならず労働者双方で理解を深め、上手く活用してほしいと思います。

裁量労働制の運用はここに注意

裁量労働制は残業時間や残業代の考え方が通常とは異なるため、導入後は適切に運用することが重要です。ここでは、正しく運用するために押さえておきたいポイントを解説します。

残業時間の扱い

裁量労働制には「残業」という概念がありません。先述したとおり、裁量労働制はあらかじめ企業側との協定で定めた時間を労働時間とみなす制度です。

例として、1日のみなし労働時間を「8時間」と設定した場合、実際に働いた時間が「2時間」や「5時間」など規定より少なくても8時間働いたとみなします。

一方で、働いた時間が「10時間」や「13時間」と規定を超過していても、その日の労働時間は8時間と考えます。

いわゆる「定時」と呼ばれる一定の始業・終業時間に対する規定がないため、みなし労働時間を超過して労働しても「時間外労働」とは評価されず、時間外手当が生じないのが裁量労働制(深夜、休日は除く)です。

残業代について

週40時間、1日8時間と定められている法定労働時間は、裁量労働制のみなし労働時間にも適用されます。

そのため、裁量労働制のみなし労働時間を、法定労働時間「1日8時間」を超えて設定した場合、超過して定めた時間分は時間外労働として扱い、「時間外手当」を残業代として支払います。

その場合は、みなし労働時間に基づいて算出した金額を固定残業代として、あらかじめ給与に上乗せしておくのが一般的です。

また、時間外手当は労働基準法第37条第1項により、通常の賃金に25%以上割増賃金の上乗せが必要です。

●時間外手当の割増賃金の計算例

みなし労働時間9時間、1時間あたりの賃金2,000円の場合(割増賃金率:25%)
・1日当たりの法定時間外労働=9時間-8時間=1時間
・1日当たりの時間外手当=1時間×2,000円×1.25=2,500円

ただし、みなし労働時間が「8時間以内」の場合は、実労働時間と関係なく法定労働時間内の労働時間とみなすため残業代は発生しません。

休日労働の扱い

従業員が休日に労働した場合は、裁量労働制においても通常の従業員と同様の扱いとなるため、休日出勤手当として労働基準法第37条第1項により35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

企業独自の所定休日の場合は、みなし労働時間制が適用できますが、法定休日の場合は適用外のため、実労働時間に対して割増賃金を算定しましょう。

なお、所定休日に裁量労働制を適用する場合は、労使協定や労使委員会の決議による規定が必要です。

●法定休日に勤務した場合の割増賃金の計算例

1時間あたりの賃金2,000円、法定休日(1日のみ)に午前9時から12時まで勤務した場合(割増賃金率:35%)
・法定休日勤務に対して支払うべき賃金=3時間×2,000円×1.35=8,100円

深夜勤務の扱い

深夜時間帯(夜22時~翌朝5時)に労働した場合も、労働基準法第37条第4項の割増賃金が適用されます。そのため、従業員が裁量労働制のもとに深夜勤務をした場合は、深夜労働時間数に対し25%以上の割増賃金を支払います。

●深夜勤務の割増賃金の計算例

1時間あたりの賃金2,000円、夜10時から翌朝1時まで深夜勤務をした場合(割増賃金率:25%)
・深夜勤務に対して支払うべき賃金=3時間×2,000円×1.25=7,500円

休日の扱い

裁量労働制においても、休日に関する規定は労働基準法の定めの通りです。そのため、法定休日は少なくとも毎週1日、または4週間を通じて4日以上付与する必要があります。

代休・振替休日の扱い

従業員が裁量労働制の適用外となる休日に労働した場合、その時間分を代休として扱うことも可能です。しかし、代休は付与義務があるものではないため、賃金精算とすることも可能です。

また、勤務時間を「振替休日」として扱う場合は、その日の労働時間がみなし労働時間に満たない勤務時間であっても、企業が定めたみなし労働時間分は働いたものとみなすため、1日単位で付与する必要があります。

年次有給休暇について

年次有給休暇は、裁量労働制においても通常の従業員同様に付与します。しかし、裁量労働制の対象となる従業員は出退勤や労働時間が自由なため、全員が規定通りに年次有給休暇を取得しているのか、わからないケースも考えられます。

従業員が年次有給休暇を取得する際は、あらかじめ決められた届け出をするよう就業規則などへ規定し、社内で徹底するとよいでしょう。

時間管理の方法

労働時間を従業員の裁量に委ねる裁量労働制ですが、従業員が長時間労働を行わないよう、労働時間を管理する必要があります。勤怠管理が不十分だと深夜・休日の労働に関して把握できず、本来支払うべき割増賃金が未払いとなる可能性があります。

そのため、裁量労働制の対象となる従業員も、通常の従業員同様に「勤怠管理システムを利用した出退勤記録」や「従業員へのヒアリング」などを通して、従業員の労働時間を把握するとよいでしょう。

管理職の扱い

労働基準法第41条で「管理監督者は労働時間、休憩、休日の制限を受けない」とされていることから、一般的に、「管理職には残業代が不要」と考えられています。

しかし、「部長」「課長」といった管理職としての肩書きがあっても、経営には関わらずに上司の指示で働いたり、出退勤時間を管理されたりする従業員は労働基準法第で定められた「管理監督者」には該当せず、休日・深夜業務における割増賃金が必要です。

裁量労働制を適用する場合は、管理職一人一人の立場や業務内容、待遇などを確認し、適切に対応しましょう。

●管理監督者の判断要素

・経営に関わる決定権や部下への労務管理や指揮監督の権限があるか
・労働時間や出退勤時間など、勤務形態について裁量権があるか
・管理監督者の地位に見合った高額な賃金支給などの待遇があるか

在宅勤務の扱い

裁量労働制の対象となる従業員もテレワークなどの在宅勤務が可能です。ただし、オフィス勤務の従業員と比べ在宅勤務の場合は正確な労働時間が把握しにくくなります。

そのため、裁量労働制を適用する場合は対象従業員の健康確保の観点から、協定や決議で定めた通りに勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う必要があります。

また、必要に応じて労使協定で定めたみなし労働時間が適正か、業務量や期限の設定が不適切ではないかを労使で確認するとよいでしょう。従業員の時間配分の裁量が失われていないかを確認し、結果に応じて業務量の見直しも必要です。

時短勤務の扱い

裁量労働制の対象従業員についても時短勤務が可能です。

従業員が育児や介護を理由に時短勤務を申し出た場合は、みなし労働時間ではなく、実労働時間における所定外労働や深夜労働を制限し、短時間勤務を導入する必要があります。裁量労働制に時短勤務を取り入れる場合は、労使で定めたみなし労働時間よりも短いみなし労働時間の適用が必要となるため、労使協定の変更や労委員会による新たな決議を行います。

それに伴い、企業が求める目標の変更や、それに伴う賃金の変更などの対応が必要です。

副業の扱い

企業が認めていれば、裁量労働制の対象従業員でも副業は可能です。

しかし、副業は一般的に休日などを利用して行うため、「本業に支障が出ないか」「従業員の健康管理できているか」といった懸念点もあります。

企業は、従業員の健康管理といった観点で定期面談やヒアリングを行い、問題がある場合は改善指導を行うなどして対応しましょう。

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