【再就職支援サービスの傾向と選び方】リストラ・解雇の注意点

「リストラ」と「解雇」の違いは
「リストラ」といえば「解雇」をイメージする人もいるようですが、実際はリストラと解雇は違います。ここでは、混同されがちな2つの違いを確認しておきましょう。
解雇とは会社都合で社員を辞めさせること
解雇とは、雇用側が会社都合で従業員に対し、労働契約を一方的に解除することです。
ただし、労働契約法が定めるところの「解雇権濫用の法理」にもとづいて、厳格な要件を満たさないかぎり、解雇の適法性は認められません。
リストラとは社員が会社と合意のうえで退職すること
リストラは再構築(リストラクション)という意味なので、直ちに人員削減を意味するものではありません。むしろ人員削減はあらゆる手を打った後の選択肢です。
とはいえ、人件費は経費の中で大きな部分を占めるので、リストラが人員削減を伴うのが大半であることも事実です。ただし、リストラの人員削減は従業員の合意のもとでの「退職」であり、一方的な解雇ではありません。
リストラ(人員削減)の方法は2つ
リストラの人員削減の方法は2つあります。「希望(早期)退職者募集」と「個別の退職勧奨」です。
希望(早期)退職者募集
希望(早期)退職者募集によるリストラは、社内で広く退職希望者を募るか、定年を控えたシニア層に早期退職者を募る方法です。
条件として退職金が上乗せされるのが一般的です。
希望退職者募集のメリットとデメリット
この方法は従業員側から手を挙げる方法になるので、労務問題が起こるリスクは低いというメリットがあります。
ただし、辞めて欲しくない人材が流出する可能性もあるのはデメリットです。対策として希望退職に応募できる対象範囲を限定したり、個別面談の前提で許可制にしたりする方法があります。
希望(早期)退職者募集の具体的な手順: 手順としては以下のとおりです。
- 募集人数・募集期間・対象者の条件(年齢・役職など)を設定する(人件費が高い管理職以上や50代以降に絞るなど)
- 退職条件を決める
- 希望者の募集を実行し面談を行う
募集要件や退職条件がすべて決まったら、希望(早期)退職者募集を公表します。そして手を挙げた希望者と面談を行います。また、従業員全員と面談を行えば、流出させたくない人材には事前にそれを伝えることができます。
個別の退職勧奨
個別の退職勧奨は、会社側が退職を勧める対象者を決めて面談する方法です。
限られた対象者との面談になるので、少ない労力で実行できるのがメリットです。
一方、あくまで従業員の任意による退職を求めるものなので、対象の従業員から合意を得られるとは限らないデメリットがあります。
個別の退職勧奨の具体的な手順: 具体的な手順は以下のとおりです。
- 退職勧奨の詳細を検討する
- 対象者との面談を実施
- 退職の勧奨
- 従業員の質問・意見に傾聴して真摯に対応する
- 合意を得るための処遇の提示
- 書面にて雇用関係終了の合意を得る
対象者の合意が得られた場合には、「雇用契約終了についての合意書」を交わします。
個別の退職勧奨の実行に際しての注意点は、後々に労務問題に発展することを避けるためにも、合意書の作成は弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのが賢明です。
リストラ実行時のリスク回避と再就職支援の活用
リストラによる人員削減を実行する際には労務問題の発展、企業イメージの低下、残る従業員のモチベーションを低下などのリスクがあります。
再就職支援サービスなどを上手く活用しながら進めることをおすすめします。対象者の転職がうまくいくように、外部にサポートを委託し、サポートを受けて望ましい転職先に入ることができれば、雇用の維持という社会的責任も果たせます。
再就職支援とは
再就職支援とは、企業が業績悪化などを理由に人員整理を行う際に、対象となった従業員に次のキャリアをサポートすることをいいます。
「人員削減を行う企業」が人材紹介会社に再就職支援を委託し、費用を支払います。
企業がこれまで貢献してくれた従業員に対して、次のキャリアへ橋渡しすることで、退職者の精神的・経済的な不安を緩和する効果があります。
再就職支援は、企業が自社の従業員の再就職の支援を人材紹介会社に委託します。人材紹介会社は、求人情報の紹介だけではなく、キャリアカウンセリングやスキルアップツールの提供などを通じて内定をサポートします。
再就職支援と一般的な転職の人材紹介の違いは、ビジネスモデルにあります。
一般的な転職の人材紹介会社は、求人を出した企業が報酬を支払いますが、再就職支援では「人材削減を行う側の企業」が費用を支払います。
再就職支援サービスの費用の目安
サービスを利用する費用の一般的な目安は、1人当たりの総額で50~100万円前後とされています。
再就職支援サービスは、再就職希望者の出身企業と人材を求める企業、人材会社(再就職支援サービス会社)の三社間で行われ、一連のサービスを受けるための費用は再就職希望者の出身企業が支払います。
サービス利用のための費用の相場は一人当たり50万円~100万円前後とされますが、費用の担い手となる企業は国の定めた「労働移動支援助成金」を受けることができます。
解雇やリストラについて納得できない社員がいる場合は、外部サービスに面談を依頼するのも1つですよ。

再就職支援サービス活用で利用できる助成金があります
再就職支援サービスを活用する際に、要件を満たせば支給を受けられる助成金は「労働移動支援助成金」と「中途採用等支援助成金」です。
労働移動支援助成金は次の場合に支払われます。
申請方法・金額等の詳細は「労働局」「ハローワーク」「支給申請窓口」に確認をお願いします。支給額は、委託総額もしくは60万円のどちらか低い方が上限となるため注意しましょう。
再就職支援を活用する企業側のメリット
再就職支援サービスの目的は、単純に再就職先を紹介するだけではなく、会社都合で退職を余儀なくされる従業員の経済的・精神的なケアを行うことです。
利用することで得られるメリットについて、企業側・従業員側の視点から解説します。
会社側の主なメリットは、退職者のケア、企業イメージダウンの回避、在職者のケアです。
会社都合での退職者をケアできる
会社都合の退職は、従業員に大きなショックを与えます。退職を告げられた従業員は、今後のキャリアや経済的な面について不安を感じるでしょう。
再就職支援では、これまで会社を支えてくれた従業員の次のキャリア構築に対して会社が積極的に支援します。
企業の負担で再就職先を支援するため、従業員にとって転職活動への不安が軽減されます。
従業員からすると、支援を受けながらキャリアを見つめなおす機会でもあります。再就職支援サービスを通して、履歴書の添削や面接のトレーニング、キャリアカウンセリングなどの一連の支援を受けることができます。前向きな気持ちで、次のキャリアを検討しやすくなるでしょう。
企業のイメージダウンを避けることができる

退職時の対応によっては、従業員は企業に悪い印象を抱いてしまうかもしれません。人員整理にあたりフォローがないと、口コミサイトやSNSで厳しい評価が広まる可能性があります。再就職支援は、企業のイメージダウンを避けることにつながります。
今後も在籍する人の不安を和らげることができる
やむなく退職をお願いする人に対して、手厚く支援する姿を見せることで、在職者は安心して働くことができます。従業員のキャリアと真剣に向き合っているという会社の姿勢を示すことにもつながるでしょう。
福利厚生の一環として、再就職支援サービス制度を設けている企業もあります。
再就職支援を活用する退職者側のメリット
従業員は大きな不安を感じています。特に人員整理の対象になりやすいミドルシニア層は、若年層と比較すると転職が一般的ではないため、転職活動に不安を覚えます。
再就職支援によって、職務経歴書の書き方や面接ノウハウの支援を受け、キャリアについてのアドバイスをもらえたりすることは、従業員にとって安心につながるでしょう。
費用面の心配をせず次の仕事が探せる
再就職支援サービスは、人員整理を行う企業が費用を支払います。従業員は費用面の心配をすることなく、応募書類の添削やスキルアップの支援も受けられます。
整理解雇で退職金は支払う必要はあるか?
会社が就業規則や退職金規程において、「退職金」の支給基準を定めている場合は、基本的に整理解雇であっても退職金が支給されます。
しかし、就業規則や退職金規程がない場合は、会社は従業員に対して退職金を払う義務がそもそもありません。
会社との間で交渉して退職金を支払うという約束を取り付けなければ、退職金をもらうことはできません。退職金がもらえない場合は、失業手当という国で労働者をサポートする制度があるのでそちらを利用しましょう。
再就職支援の注意点
再就職支援を利用する際は、通常の人材紹介とは異なる部分があるため、注意が必要です。
費用は自社が負担する
再就職支援のサービスを利用するには、企業が費用を負担する必要があります。人員整理の対象となった従業員が個人で登録することはできません。
また企業は、再就職支援を人材紹介会社などに委託した場合に一定の助成金が支給される「労働移動支援助成金」を活用できます。
再就職先が決まらないこともある
再就職支援を委託した場合も、再就職先の決定率は100%ではありません。
次の就職先が決定するかどうかは、受け入れ先の企業の判断次第です。再就職支援を従業員に案内する際は、再就職先を確約するものではなく、あくまで支援という位置づけであること、再就職先の決定は通常の転職活動と同様であることを伝えます。
再就職支援以外のフォローも用意する
企業は従業委員の再就職を支援するため、可能な限りフォローする必要があります。
たとえば、人員整理の対象となる可能性が高い従業員に対して、デジタル関連のスキルなど需要の見込まれるスキル教育を提供し、新しいキャリア形成を支援する「アウトスキリング」は、企業ができる支援の一つです。
解雇を行う前に、従業員のスキル習得を支援することで、成長産業への就職・転職へとつなげます。
また、新たに人材が必要な企業と雇用関係を結びなおす「転籍型出向」も、人員整理の目的を果たして従業員のキャリアを支援する選択肢となります。
再就職支援の流れ
最初に、企業が再就職支援サービスを行う会社と契約を結びます。
その後の流れは、一般的な人材紹介会社と基本的に同じです。再就職支援サービスの担当者(キャリアアドバイザー)は、対象者と個別に面談し、中長期的な視点でキャリアプランの設計をサポートします。
再就職支援サービスの選び方
再就職支援サービスを利用するのは、従業員のサポートが主な目的です。委託先を選ぶ際は、支援の内容を吟味することが重要です。
キャリアカウンセリングの質
キャリアカウンセリングは、再就職支援において多くの場合、本人たちへの直接的な最初の支援です。本人の適性や希望を把握する上で、大変重要です。
丁寧なカウンセリングは、従業員に安心感をもたらします。転職市場の状況を共有し、生かせる経験や強みを気づかせてくれるカウンセリングは、キャリアプランの設計に役立つでしょう。
キャリアカウンセリングが、対象者にとって良いものとなるかどうかは、担当者の力量次第です。人材紹介において長年の経験があるか、キャリアカウンセラーなどの資格を有しているか、担当は専任かなどを確認します。
人員整理の対象になった退職者は精神的なショックを受けることもあります。再就職支援では、一般的なキャリア支援以上に、精神的に寄り添うカウンセリングが求められます。
支援の手厚さ
再就職に向けた準備段階では、本人のスキルアップが重要です。セミナーやeラーニングなどで再就職に役立つスキル習得を支援するほか、履歴書の添削や模擬面接対策も欠かせません。
面接に進むまでに、どのような支援サービスがあるのかを確認します。再就職支援を行う企業の中には、メンタルヘルスのサポートや、家計資金計画などの経済的支援を行う会社もあります。
再就職の実績
再就職に至るまでの期間、決定率、その後の定着率などを確認します。
求人数
紹介してもらえる求人数を確認します。再就職支援の対象となる従業員が中高年の場合、セカンドキャリア・シルバー人材を対象とした求人数についてもチェックすると良いでしょう。
業界、職種などの得意分野
退職者の経験と関連する業界や職種に強みがあるかどうかを確認します。再就職支援サービスを受けた人の事例や声も、次のキャリアを検討する際の参考になります。
費用
委託にかかる費用を確認します。サービス提供企業によって異なりますが、退職者1人当たり50万円~100万円が相場です。
オンライン対応
オンライン対応は、利用者の利便性を向上させることに加え、移動にかかる費用を軽減することができます。キャリアカウンセリングやスキルアップ支援、選考のサポートなど、どの対応までオンラインで対応できるかを確認します。
再就職支援を提供する全国のソリューション企業一覧
- アデコ株式会社
- 公益財団法人産業雇用安定センター
- タリスマン株式会社
- 公益財団法人東京しごと財団
- 株式会社パソナ
- パーソルキャリアコンサルティング株式会社
- 株式会社マイナビ
- マンパワーグループ株式会社
- ランスタッド株式会社
- 株式会社リクルートキャリアコンサルティング
費用などはサービスによりますので、数社問い合わせをされることをおすすめします。ベンチャー企業であれば、あまり差はありませんが、製造業などであれば「パソナ・ランスタッド」などがおすすめです。
リストラや解雇は、企業と従業員にとって困難な局面ですが、適切な再就職支援サービスの選択は、この過渡期をスムーズに乗り越える鍵となります。
サービスを選ぶ際には、個々のニーズやキャリア目標に合致するかどうかを考慮し、提供されるサポートの範囲、専門性、実績を慎重に評価することが重要です。
また、心理的サポートやキャリアコンサルティングの質も重要な要素です。最終的に、適切な再就職支援サービスを利用することで、従業員は新たなキャリアパスを見つけ、変化を前向きな機会として捉えることができます。
大変なタイミングかと思いますが、採用した責任も含めて真摯に対応されることをおすすめします。